沿革
航空宇宙工学部門はわが国2番目の航空系学科として、1937年の九州帝国大学工学部航空学科に端を発する教育研究組織です。1999年の大学院重点化、2004年の国立大学法人化、2005年の伊都キャンパス移転を経て、現在に至っています。卒業生は航空宇宙分野を始め、広く社会で活躍,貢献しています。
理念
航空宇宙工学は航空機および宇宙機という特定の対象を目的とする点で特異な存在であり、その理念はこの特質と一体の関係があります。まず第一の理念は総合性です。航空宇宙機では常に機能と重量を勘案しつつ最も合理的な形態を生み出す必要性から、分野間の相互連携が行われます。
第二の理念は数理的理解です。すなわち極限状態で航行する航空宇宙機の設計には、数理モデルを構築して演繹するという過程が不可欠となります。
第三の理念は科学的方法論の重視です。極限環境を克服するには、これまでの自然科学の成果を広く利用することはもとより、新たに数多くの実験を合理的に実施して、数学モデルによる検証と予測を行うという過程をとることが必要です。
さらに、航空宇宙工学に関わる技術者や研究者に共通する資質として、航空機や宇宙機、さらには空と宇宙に関する情熱を挙げざるを得ません。空を飛ぶことは太古からの人類の夢でした。今、100年の航空機の歩みの後、宇宙へ、星々へと旅立つことが、人類のさらに大きな夢となっています。この夢の追求に参加できる喜びが、航空宇宙工学に携わる者の共通の絆です。
航空宇宙工学部門における教育の理念も、このような特質から生まれ、各専門分野において、基礎となる物理現象からの数理的理解を主眼とし、しかも他の分野との総合的な連携を重視した教育を行うことが重要としています。航空宇宙工学コースの卒業生や航空宇宙工学専攻の修了生であっても、必ずしも航空宇宙分野に就職するわけではありませんが、このような資質は、工学のどのような分野においても、技術者や研究者として最も必要とされるものです。
教育
学部教育
航空宇宙工学は、様々な領域の原理を探求し、最先端の技術と英知を結集することにより、空と宇宙をより安全・身近にし、活用・開拓することを目指す学問分野です。航空宇宙工学科は、航空機や宇宙機の開発に不可欠である、基礎知識と応用的アプローチ、実践的スキルを身につけ、総合的な視点と考え方を育むために,部門内の教職員による講義・実験、及び外部非常勤講師の集中講義等を開講しています。
大学院教育
力学を基礎とした工学理論の習熟と、航空宇宙機開発特有のシステム工学の探究を通して、総合性および高度な専門性、国際性を身に付けた研究者・技術者・教育者を養成するために、部門内の教職員による講義、及び外部非常勤講師の特別講義等を開講しています。
航空宇宙工学部門
特徴
研究組織としての航空宇宙工学部門は4つの大講座(航空宇宙熱・流体力学、航空宇宙機構造強度,航行ダイナミクス、宇宙システム工学)からなります。これらが連携して工学部航空宇宙工学科の学部教育と大学院工学府航空宇宙工学専攻の大学院教育を担当しています。
航空技術連携講座
国際社会の経済発展とグローバル化により、航空輸送は規模の拡大が続き、航空機の製造・運航は成長産業の一つとして期待されています。その背景には技術革新による安全性・経済性・環境適合性・利便性などの向上があり、それらは国際的な共同開発と技術競争によって生み出されています。
最新の航空機開発においては、複合材技術など世界に通用する我が国の先進技術が重要な役割を果たしていますが、その他にも空力技術、IT応用による飛行システム技術など国際競争力をもった技術の研究開発がますます重要となっています。
九州大学は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力を得て、これら技術革新が期待される航空技術に関連する「航空技術連携講座」を、2010(平成22)年4月から工学研究院および工学府に設置しています。連携講座では、JAXAから招聘した研究者と九州大学の教員が協力して連携研究テーマを設定し、大学院生の研究指導を行っています。また、JAXAインターンシップ制度等を利用して、大学院生がJAXAの大型試験設備を使った試験研究等に参加し、JAXAでの研究開発を経験しています。JAXA招聘教員による特別講義や、航空技術関連の九州大学-JAXA間の共同研究も行っています。
飛行システム技術・風洞試験技術・複合材構造技術の3分野で始められたこの連携講座に2015(平成27)年度からはさらにジェットエンジンの騒音低減技術が追加されました。航空宇宙工学専攻ではこの「航空技術連携講座」をとおして両機関の融合による教育の充実と研究の活性化、さらには航空技術関連のイノベーション創出への挑戦を積極的に行っています。
大型実験設備
航空宇宙工学部門は人工的に風を作る装置である風洞を3種類有しています。1つは風速60m/s(時速約200km)の低騒音風洞、もう1つはマッハ数3.5(音速の3.5倍.時速4,000km)の超音速風洞。そしてマッハ数1前後の遷音速風洞です。これら実験装置を用いて、航空機,宇宙往還機周りの流れを調べたり、力を計測したりします。
高速風洞を設置している建屋には微小重力実験環境を再現する高さ18mの落下棟も備えています。
パンフレット
パンフレットの内容は,航空宇宙工学の説明と部門の歴史,カリキュラム(p.2),実験設備と研究室(p.3)入試情報(p.4)です.